September 2004
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町家保存・再生活動家:松田 緑さん

松田さん   松田緑さんが町家の保存・再生活動を手掛けたきっかけは偶然と言っても良い。彼女は京都市内で代々続く家に生まれた。彼女は大学卒業後、2年間銀行に勤めたが、その後、家業を手伝う仕事をし始めた。

   そんなある時、幾つかの貸し家が空になったまま放置してあり、住める状態ではなかったので取り壊した後にアパートにしようという案が出た。しかしながら、彼女自身も古くから伝わる木造日本家屋で生まれ、当たり前のようにそこで育ったが、最近仕事で東京のコンクリートのマンション暮らしをし始めて木造日本家屋の良さが分かってきた。作家やアーティスト達からもそれらの空き家をみて、住んでみたいと言う問い合わせが多かった。そこで自然との関わりも取り入れた町家で、"昔と今"、"お年寄りと若者"など色々なものが"融合"して、隣近所の住人同士がコミュニケーションを持つ昔ながらの町並を取り戻したいという気持ちがだんだん強くなってきた。知り合いの大工さんや水道屋さん達や、ボランティアメンバー達で2年間を掛けて9軒の空き家になっていた町家の修理を完成させた。今、そこには美容師、学生、アーティスト、作家などが住んでおり、隣近所のお年寄りから着物の着付けを教わったり、町としてのコミュニケーションも復活してきている。

   松田緑さんの考え方は、ただ古いものを残そうとしているのではなく、色々なものが融合して成り立っていた「町並み」を残そうとしているのだ。「食」、「住」、「遊」、「学」が融合し、活きた町並みを残そうとしている。京都の町並みは京都の文化そのものであるが、その文化を残そうとして単に古いものの保存活動として運動しても、例えばマンション建設のような経済活動に反対することは難しくなっているのが現状である。企業活動としてやって行かないと、昔ながらの町並みを保存していくのは難しくなっているのが現実である。

   そこで、最近新たに始めたのが単に貸し家として町家を貸すのだけではなく、京都に憧れをもち、京都の町家での生活に興味を持つ人たちが多いので、その人達に旅の宿の代わりに暮らしてもらう事業も始めた。京都の町家で実際に生活する体験をしてもらう、つまり、厳選された食器や食材(例えば湯豆腐の材料など)は用意しておくが、泊まる人達が自分で料理して食べるようにするシステムである。日本の旅館では宿泊客に出す習慣になっているお茶とお菓子にも松田さんなりのコダワリがある。彼女のプロジェクト名である「橙」(だいだい)と名付けられた和菓子を老舗の和菓子屋さんに特別に注文している。松田さんにとって、「橙」は特別な意味合いを持つ言葉である。橙

   彼女の家の庭には小さい時から毎年実を採っていた。橙の木が植わっている。だいだい(代々)とは何世代も続くという意味もあり、彼女が町家に注ぐ気持ちと通じるところがある。また橙という漢字のもつ意味から、木の台に足をそろえて登るから発展して町の人々が町家に集まるようにという願いもこめられている。そこには京都の町衆が作り上げてきた京町家で生活しながら何百年もの間京都の人々に大切に受け継がれてきた京都の文化をしみじみと味わって欲しいという彼女の願いが強く込められているのだ。また、近所に銭湯があるので、銭湯巡りもセットで考えているらしい。彼女のプランはどんどん膨らんでいっている。今、雑誌、テレビからの取材申し込みや、京都市やNPOからの問い合わせも多くなってきた。松田さんの活動がこれからももっと活発になって行くことを願っている。.   

  橙プロジェクト  
  ウェブサイト:http://daidai.biz
  メールアドレス:info@daidai.biz
  電話番号:075-811-1601
  Fax: 075-811-1661
   
-多羅 晶子
町家NPO:京町家作事

京町家   「京町家」とは、今でも京都に残っている第二次世界大戦以前に建てられた木造住宅などを言う。京町家の保存活動や活用はいろいろな団体や個人レベルで行われているが、今回は特定非営利活動法人 京町家再生研究会を中心にした4つの市民活動組織の一つである、京町家作事組を取材した。

   京町家再生研究会で町家の保全・再生活動をしていると、町家の改修について専門的な知識と保存技術を持った実践部隊が必要になり、その必要性に迫られて大工さんや左官屋さんなどの会員を集めて構成して出来たのが京町家作事組である(現在38社)。町家を活きた家として保存していくには町家が使用されることが一番である。町家を売りたい人と買いたい人、大家さんと借りたい希望のある人、などの橋渡しをして活性化させることが必要であり、京町家情報センターがその情報の仲介を担っている。京町家友の会は、京都に住んでいる人以外にも京都の文化に興味のある人達が多くいるので、その人達にももっと勉強をしてもらい、より多くの人達に文化を通して京町家に対する理解を深めてもらうことで町家の保存活動に役立てようという狙いで出来た。

   では、いったい京町家の魅力とは何か? 京町家は木、土、紙などすべて自然の素材を使って作られているが、それが京都の自然環境とうまく融和が図られる要素であり、住む人に住みやすさを感じさせることになる。もちろん京町家そのものの作り方に工夫もあるし、実際に住む時に住む人達が住み方の工夫をする必要もある。即ち、その作り方の工夫では、石の土台に直接木の柱が乗せられた工法や、おもてから奥の庭まで開放的な構造は、風通しを良くしているし、軒が深く陽を遮るため戸を閉めておくと逆に外の熱気が入らずに涼しくすごせるようになっている。また、柱など天然木をそのままむき出しに使用しているのも、腐ったり、白蟻に食われているところが良く分かり、痛んだところだけを切り取って新しい木ととりかえることを簡単にしている。寺院などから想像出来るように京町家は素材的には同じ物であり、管理をうまく行えば何百年も使うことは可能である。

   しかし、確かにただ住んでいるだけで快適というわけではない。夏は襖を葭簾 (葭で編んだ簾)に替えることで風通しを良くし、視覚的にも涼しくする効果がある。また冬は暖房について考える必要もある。しかし使う部屋だけを暖めるだけで良いことも便利な点であるし、その暖かい部屋に人が集まりやすくなり、そこでコミュニケーションが生まれるという利点もある。これらの暑さ寒さの自然環境との共存や、襖や障子一枚だけの隔たりしかない隣部屋の家族とのコミュニケーションのしやすさが、人間が生きていく上で、あるいは子供たちが成長していく上で重要な役割を果たしているとも考えられる。しかしながら、これらの京町家を新しく建てようとしても建築基準法や消防法など行政の制約が多く不可能となっている。京都の町家とその町並みを保存するには、今有る京町家を改修するしか 方法が無いのが現状である。そして、改修工事が出来る大工さんを養成することも必要であり、また地元の自然環境にマッチする地元産の木材の確保も必要になる。大工さんを養成する学校の開設プロジェクトも検討しているが、木はすぐに育つものではなく自然環境の保存まで考える必要があると思われる。 

   今、何気なく町家のブームが起こっているようであるが、その京町家保全・再生の目的とするところはもっと奥深いもののように感じられる。

受け付け時間:月ー金 13:30-18:30
電話番号:075-351-0392
Fax: 075-351-2392

-多羅 晶子

 
Note:This list is by no means exhaustive. Information is subject to change without warning.
 
 
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